発起人の山平昌子です。
2020年9月から一年間の企画として始めた「ひとうたの茶席」。無事に連載を終えることができました。
Webページをご覧くださった皆様、また展示に足をお運びくださった皆様、誠に有難うございました。展示では皆さんと直接お話できて、制作側からは思いもよらないような視点からの新たな気づきや発見をたくさん頂きました。
書家、表具師、華道家、写真家がそれぞれの専門分野を持ち寄って、存分に表現した一年間でした。毎月安曇野から送られてくる書家・根本さんと表具師・岸野さんの作品の出来映えに驚き、根本さんの解説文を読みながら、どのように撮影しようかと華道家・平間さんと写真家の夫・山平とが話し合い、撮影場所となった自宅で試行錯誤を繰り返す時間はとても楽しいものでした。
どのメンバーも、企画を始めた頃とは違う場所にいることを実感しているのではないでしょうか。私は発起したというだけで、創造のプロセスを一番近くで見せてもらえる特等席におりました。
企画の立上げ時期が新型コロナウィルスのはしりと重なったため、当初の想定とは方向を転換し、移動をせず、なるべく人と合わないような内容に切り替えました。その制約がかえってよい効果を生んだのかもしれません。
振り返れば連載内の「うたと一服」はすべて独服で、この一年を象徴する茶の風景のようにも見えます。私個人としては、いずれ経済原理ごと変化するだろうという予感の中で、変化の先まで耐えうる何かを育てていくための、ささやかな実験でもありました。
連載を始めた時、根本さんと話合い、「ひとうたの茶席」のメンバーにお茶人を入れないという選択をしました。どうしても、どこかで見たようなもの、落としどころが想像できるようなものにしたくなかったのです。ですがその選択は、この企画を自由と無知の間を揺れ動く、難しいバランスにさらすことにもなりました。お茶人から見れば、危なっかしい企画であっただろうと自覚しています。
連載の最後に、この企画の起点であった神津朝夫先生にお話を伺うことができ、また八雲茶寮という素晴らしい場所で展示を行うことができたのは、偶然の重なりでしかありません。メンバーの思い入れが呼び寄せた幸運のおかげで、私たちが本来したかったことの意図を、一番良い形でお伝えすることができたと感じています。私たちの質問に丁寧にお応えくださり、また掲載をお許しくださった神津先生、有難うございました。
一年前のごあいさつに、「一年経った時、これが茶席と呼べるようなものになるのかどうか、どうぞお見守りください」と申し上げました。八雲茶寮での「書と花いけの茶席」は、私たちの想像を遥かに超えたお茶席でした。美意識の行き届いた場所をご提供いただき、共に茶席と展示を作ってくださった八雲茶寮の皆様に、心から感謝いたします。
「ひとうたの茶席」は一年連載の予定でしたが、皆で話合い、もう少し続けていくことにいたしました。しばらくお休みをして、年明けの頃、こちらで再開のお知らせをいたします。
不安や不満を持つことの方がたやすい毎日に、創造の可能性の方に目を向け、たくさんの人を巻き込みながら、いずれもっと大きな遊びができるよう、明るく歩みを進めていければと思っております。
今後ともどうぞ暖かく見守っていただきますよう、メンバー一同より、お願い申し上げます。
最後に、最もハラハラとたくさんの言葉を飲み込んで見守ってくださった、私たち夫婦のお茶の先生に、この場を借りて御礼を申し上げます。
2021年10月吉日
ひとうたの茶席 発起人
山平昌子
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